2013年5月27日月曜日

「オススメは?」という質問の恐ろしさ

 知人がTwitterで、これからレンタルするDVDの作品名を書いていた。まだ観たことがなかった作品だったので、興味を持った。それと同じ日。ネットで、オススメの本を持ち寄って紹介するイベントの記事を読んだ。まだ読んでいない本も出ていたが、あまり興味を持てなかった。

 前者では興味を持って、後者では持てなかった。その理由が何かといえば、「誰が勧めているか」の違いだ。前者については、その知人は「これから観る」というだけだから厳密には勧めているわけではないが、それでもその知人が「借りてみよう」と思った、それだけ関心を持ったということ。だから自分は「彼が観たいと思っているなら」という前向きな評価をした。一方、後者は、どんな人が勧めているのか分からない。予想外の当たりがあるのかもしれないが、はずれだって多いだろうという思いが勝ったわけだ。

 そもそも映画にしても本にしても、巷間よい作品だと言われているものが自分の好みとは限らない。自分が一目置いている人が勧める作品だからといって、自分のお気に入りになるかどうかは別だ。それでもやはり、誰だか分からない人が勧めているものよりも、一目置いている人、センスがいいと思っている人が勧める作品のほうに食指は動く。特に、過去に好きだった作品が同じだったりすると余計にだ。

 こう考えている人が増えているのかどうかは知らないが、それが自然だとすれば、ソーシャルメディアが広く支持されるのも分かる。「全米が泣いた」作品よりも、「自分と好みの合う友達のAさんが『泣けるよ』っていってた」作品のほうが観てみたいと思うのは自然ではないだろうか。

 大学生のころ、かなりの数の映画を(レンタルビデオで)観ていて、そういう話をすると「オススメは?」と(軽々しく)聞かれることがあるのだが、答えに窮してしまう。なぜなら、自分が好きな作品が相手の好みに合うかどうか分からないからだ。
 相手が「どうせ好みは違うんだから」と分かってくれている人ならいいのだが、軽々しく勧めて相手が観て全然好みと違っていた場合に、「あの人(濱田)はこれを面白いと思っているのか」と、自分がいないところで後々に思われるのも、何となく嫌だ。自分のセンスに絶対的な自信があればいいのだろうけれど、自分はそんなに不遜ではない。
 だから「オススメは?」と聞かれたら、「これまでに好きだった映画は?」と聞きかえして、“その場なりに”真剣に答えるようにしていた(とはいっても、誰にでも威張れるほどたくさん観ているわけでもないのだけれど)。少なくとも好きな作品を聞けば、監督や俳優やジャンルなどが分かるので、「オススメといえるかどうか分からないけど……」と言い訳しつつも、別の作品名を触れやすくはなる。「あの映画なら、監督が◎◎さんだけど、同じ監督の△△は観た? 僕はそっちのほうが好きだけど」とか言える。

 ただこんな心配も、本当に好きな作品であれば、心配はまったくせずに伝えられる。それは「あの作品なら面白いから間違いない」という場合もあるし、「相手の好みと合うかどうか分からないけど、とにかく自分は好きなんだ」という場合もあって、いずれにせよ自信があるからだ。

 怖いのは、「オススメは?」とさりげなく聞きながらこちらのセンスを試そうとしているのではないかという場合だ。自分は、高い評価をしてもらいたいと思う人の前だと、つい張り切って意気込んで結果失敗することが多いので、焦って結局、超無難なことしかいえない。
 逆に、「これをオススメしたい!」「聞いてくれ!」という自信がある作品を観たり読んだりしたときに限って聞かれない。聞かれてもないのに言うのは、気が引ける(ブログでは書くけれど)。


 「オススメの作品は?」と聞かれたいけど、聞かれたくない。
 もし聞くのであれば、それはとても恐ろしい質問だということを踏まえて、そして回答に時間がかかることを覚悟して聞いていただきたい。ゆめゆめ、何も考えずに聞くようなことはしないでいただきたい……。




(笑)



といいながら今ならオススメの漫画はこれでしょうかね