2013年3月6日水曜日

捨てること・捨てられることを恐れない


 何年か前、会社の口座に見知らぬ名前からの入金があった。

 自分が自社商品の販売サイトの制作担当者だったため、当時の総務担当者から問い合わせされたのだが、入金予定のリストに名前はなく、心当たりもない。少額だったが放置するわけにもいかないので調べることにした。詳細は覚えていないのが、振込者のメールアドレスが分かっていたので、そのアドレスから会社名を類推し、その会社のサイトを検索。代表者を突き止め、苗字などを確認して、おそらくその某企業の関係者からの振込であろうことを予想し、総務担当者から連絡をとってもらったところ、その通りだった。

 与えられた条件は同じだったが、その総務担当者は見つけられず、自分は見つけることができた。何もこんな些細なことで威張るつもりはなく、言いたいのは、「見つけたいものを見つけられるか」能力が重要であるということだ。

 たとえば、仕事で調べ物をしたいときに、Googleの検索窓にまず何と入れるか。第二検索ワードを何にして絞り込むか。そこで検索のセンスが問われる。通常、ネットで検索する時は一人で作業をするもので、上司や同僚に検索の結果分かったことや分からなかったことを報告することはあっても、「何と入力して検索したか」を伝えることはあまりない。だから皆、自己流の検索をしているのだが、実はその瞬間、瞬間に大きな差が生まれている。時間がかかっても欲しい答えにたどり着けばいいという考え方もあるが、時間というコストもなるべくかけないほうがいい。ある人が10分で見つけられる結果に至るのに30分かかっていてはダメだろう(付加価値はここでは問わない)。

  この検索のセンスは実は非常に重要だ。モノと情報があふれかえっている今、個人レベルであらゆる情報を保有し続けようとするのはナンセンスだ。欲しいモノを欲しい時に引っ張ってこれればいい。まさにそれがクラウドの世界なのだろう。必要なデータだからとPCのHDDに入れ続けていれば、限界がそう遠くないうちにやってくる。それはローカルのHDDかネットワーク上かという違いではない。

 
『その検索はやめなさい』(苫米地英人)

 ところで最近、「デスクの上になるべく物を置かない宣言」をした。
 単純にキレイなほうが仕事しやすい、仕事したくなる、カッコいいという動機もあるのだが、とにかく机の上は可能な限りきれいな状態で保っておこうと思っている。

 これまで「何かの役に立つかもしれない」とプレスリリースやフリーペーパー、チラシ、雑誌、書籍、スクラップなどはなるべく入手、保管してきたが、「持っている」というだけで安心してしまって有効活用できていないことを反省した。ちょうど会社を移転することになり、これを機会に新しいオフィスでは机上に物を置かないようにしようと考えた。保管していた資料を厳選、使わなかったものは捨て、「使うかもしれないなぁ」程度のモノも廃棄。デスク周りに置いていた私物も自宅に持って帰るなどして、引き出しの中も整理した。必要な資料は別のラックに入れるなどして、とにかく机の上には物を置かないようにしようと思っている(実は背後の棚には整理しきれていないモノがまだ積まれているのだが)。

 この「持っているだけで安心してしまう」という点は強く反省しなければいけない。持っていることが重要な、たとえば複製では意味のない資料や特に思い入れのあるモノはともかく、そうでなければ何も持っている必要はないのだ。デジタルのデータにして保管しておくこともできるし、ネットを調べればたいがいのものは見つけられる。

 そういえば会社を引っ越した日、旧オフィスで使っていた古いビジネスフォンの設定を業者にやってもらったのだが、その業者はマニュアルをスマホでネット検索して設定していた。一方で退職者の共有ファイルを整理していて、ビジネスフォンのマニュアルが丁寧に保管されているのを発見した。おそらく以前の引越しの時に入手して、そのまま保管していたのだろうが、その3.8メガのPDFはずーっと使われないまま共有フォルダのメモリを食っていたわけで、そんなもの、とっとと捨ててしまってよかったのだ。



『見てわかる、「断捨離」』(やましたひでこ監修)

 「断捨離」という言葉がはやって久しいが、持っているだけで安心してしまうことを戒め、要らないものは持たない。持っていなければいけないもの、持っておきたいもの以外は持たない。そうすれば、持っているものは必要なものだと分かるし、必要なときに必要なものを見つけ出す能力も高められるようになるだろう。

 それは人間関係も同じだ。自分で何でもできる必要はなく、欲しい能力を持っている人とつながることができればいいわけだ。また「何かの役に立つかもしれない」と薄い人間関係を保ち続けることにも、ほとんど意味はない。嫌われたくない、知り合いは多いほうがいいといった気持ちから、人間関係を断つことにも消極的だったが、これからは意識して絞り込みをしていこうと思う。もし将来「あの時関係を継続していればよかった」という時があったとしても、それは自分の選択と甘受するよりほかはない。ただ「すぐに役に立たない関係=不要な関係」ということではないし、「役に立つかどうかではなく関係を保ち続けたい」と思える人との出会いを大切にするということでもある。 逆に自分がそういう(捨てられる)対象になるということでもあるのだが、そんなの別にいい。「関係を保ち続けたい」と思っている相手から、そう思われる自分であるよう努力は一層していこう。

 今さら感もある内容だが、改めてこのタイミングでエントリにすることで、デスク上の整理整頓について有言実行のプレッシャーをかけておこう。