2015年5月5日火曜日

【ドキュメンタリー】半世紀続く活版印刷の新聞社(秋田)――取材、組版、印刷など一人で担う80歳



テレメンタリー「たった一人の新聞社~活版印刷で半世紀~」を観た。人口2400人あまり、高齢化率50.2%の秋田県上小阿仁村で、半世紀にわたって新聞を発行し続けている加藤隆男さん(80)を追ったドキュメンタリー。タイトルを見て面白そうだと感じ、録画してすぐ観たのだが、何が伝えたいのかちょっと分かりづらかった。




30分番組の宿命か “考えさせる”機会にはなっていなかった


上小阿仁新聞は毎週日曜発行、版型はA3で購読料は月400円(郵送だと600円)。往時は1500部刷っていたというが、今では400部。有料配布は300部強なので、売り上げは毎月13万円程度ということになる。
加藤さんが取材、原稿執筆、レイアウト、校正、活字拾い、組版、印刷などすべて一人で手掛ける。配達を続ける佐藤テツ江さんは81歳、俳句を連載している福岡キヌさんが84歳と、高齢者だけで作られ、届けられている。

番組が着目していたのは、「活版印刷」であることと、高齢者だけで作られ、届けられていることだったと思う。いずれも、長年続いてきたものの現状では終わりが見えてきている、時代のは変わったのだ、という意味では同じことだ。どこかオーバーラップする。

番組がことさらセンチメンタルに、時代の流れを嘆くつくりではないことには好感を持てた。

だが「消えゆく活版印刷」を言うなら、活版印刷がどれくらい減っているのか、今どれくらい残っているのかというデータくらいは欲しかった(番組内では提示されなかったと思う)。また高齢者ばかりに支えられている点については、「まぁ日本全国そういう所ばっかりだよね…」と言われればそれまでで、この地域に限ったことではない。

時間が30分と短いこともあって、説明で終わってしまった印象だ。秋田朝日放送としては、この新聞社の存在を全国放送で知らせることはできたかもしれないが、行間を読ませるような描写、余白部分もなく、「考えさせる機会」にするには、もうちょっと視点が欲しかった気がする。

感想をまとめるためにググったところ、1年半ほど前に、ほぼ日刊イトイ新聞で加藤さんが紹介されていたが、こちらは「仕事論!」と題したシリーズで、視点がはっきりしていて分かりやすかった。

いい題材だと思ったので、何かしら独自の視点、いい調理法を見つけられなかったのかと思う。

【追記】
思い出したので追記。ナレーションが乃木坂46の生駒ちゃんだった。彼女のことは別に嫌いではないが、実力が追い付いてなかったと思う。