2017年1月29日日曜日

「西野カナが天才である」という指摘に西野カナ好きでもなんでもなかった自分が納得した理由

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テレビ朝日系「関ジャム 完全燃SHOW」(日曜夜22:55~)という番組が面白い。
以前放送されていたNHK「亀田音楽専門学校」しかり、「ヒット曲について分析をしっかりされていて、楽譜すら読めない自分でも論理的に「なぜウケるのか」が分かって楽しい。

年始に、昨年2016年のベスト10を人気プロデューサー3人が選ぶという企画があって、2週にわたって公開されていた。今回は、蔦谷好位置さん、いしわたり淳治さん、tofubeatsさんが登場。


蔦谷さん以前、ヒャダインさんと登場されていた回などを見て以来、分析の鋭さと話の分かりやすさで注目していたのだが、今回は、いしわたり淳治さんの指摘がいくつも「なるほど」と思わされたのでまとめておく。


たとえば、RADIOFISHの「PERFECT HUMAN」がヒットした要因分析については
現代は、1曲2曲良い曲があるだけではなかなかブレイクできません。それは曲にファンがつく時代ではなくて、人にファンがつく時代だからだと思います。
お笑い芸人のように頻繁にテレビに出て喋るわけにもいかないミュージシャンたちにとって世間に対して広く自己紹介するのは、いい曲を作るよりも時間と手間がかかる作業です。
その点、オリエンタルラジオはすでにお笑い芸人として自己紹介が終わっているわけですから、キャッチーな曲をつくったら、このようにバズる(ネットで拡散)ということではないのかと思いました。
とのこと。
曲ではなく人にファンがつく、というのはまさにそうで、これは楽曲に限らないのではないだろうか。たとえば小説にせよ言論にせよ、動画コンテンツにせよ、そういう側面が強い気はして納得。
また国民的ヒットというものが生まれづらくなっている現状についても言及していた。この点、よく言われるのは、「娯楽が多様化しているから」みたいなことだと思うが、いしわたり氏は

昨今のミュージシャンは作詞や作曲を自己表現だと思っている人が多くて、 もちろん、それも間違いではないけれど、そういう自我みたいなものが 逆に世の中に流行歌が生まれにくくしている一因かもしれないなとも思います。


と話している。これは言われるまで気づかないくらい、根源的な問いかけだ。たとえばこの意見に対して、「いや、そもそも違う」と反論する人もいるのではないかと思ったくらいだ。誤解をおそれず分かりやすくいえば、ミュージシャンはエンターテイナーなのかアーティストなのか、という違うなのだろうか。


いしわたりさんは5位にAimer「蝶々結び」や4位にSuchmos「STAY TUNE」選んでいてこのあたり超好みだな、いいなと思っていたら1位がまさかの西野カナ「Have a nice day」。


ここで一瞬、「えー」と思いそうなものだが、既にここまでに彼の分析の鋭さは知っていたので、「なぜ」のほうに関心を持ったところ、こういう解説。

西野カナという人は天才だと思います。彼女の歌は単なる自己表現では終わっていなくて「こんな歌があったら誰かの暮らしがちょっと良い感じになるんじゃないか」という視点を常に持ってる感じがして素敵です。「行ってきます」「行ってらっしゃい」とか、誰もが普段口にする言葉を歌にするセンスも素晴らしく、”キャッチーの金太郎飴状態”というか、どこを切ってもキャッチーが見え隠れする名曲です


とのこと。さらに

LINEスタンプのような歌

としたうえで、こうも語っている。

流行語っていうのが歌から生まれなくなっていることを気にしていて。あるときからミュージシャンは自分の気持ちをうたう、表現するところがゴールなっていて、その曲が世の中でどう機能するかとか、誰の生活のBGMになるかとか、そこまで考えがおよんでいない曲が増えた。西野カナの特別なところはその視点が絶対的にある。誰かの生活のBGMにどうやったらなるかを考えている。

LINEスタンプかうと思うんですが、(そのスタンプを)打つときにそれ(スタンプに添えられた言葉)が流れると思う。そういう曲があればいいのにって思うんです。この曲は、スタンプになりそうな言葉がいっぱいあって、1日の生活のなかで頭の中でこの曲が流れるチャンスがなんどもある
この曲は世の中でとても機能する曲。


好みかどうかは別として、(本人の意図は分かりませんが)狙いがあってしっかりそこにあわせてきている、時代に求められるコンテンツを生み出している というところ、西野カナすごいなと思った次第。


蛇足ですが、3人が紹介した都合30曲の中で、もともと好きな曲&今回気に入った曲は


いしわたりさん
5位 蝶々結び/Aimer

4位 STAY TUNE/Suchmos


蔦谷さん
9位 LOSER/米津玄師

1位 なんでもないや RADWIMPS


tofubeatsさん
8位 恋/星野源

6位 Cry&Right/三浦大知



5位 Shut Up & Groove/Heize


2位 24K Magic/Bruno Mars 



でしょうか。蔦谷さんは今回の選曲、自分にはシブすぎた。Suchmosはちょっと前から聴いてますが、最近はAimerをまた聴くようになったのと、Heizeがお気に入りです。というか最近は洋楽Jazz以外で聴いてなかったのですが(ファレルくらい)、ブルーノ・マーズはJust the way you areのイメージと全然違ってるんですね。笑った。