2017年4月2日日曜日
『夫のちんぽが入らない』はアリでも『妻の●●●に入らない』はあり得ない
少し前に『夫のちんぽが入らない』(こだま著、扶桑社)を読んだ。どういう本かは、あちこちで語られているので紹介はせず、印象に残ったシーンをいくつか挙げたうえで、整理しきれていない、もやもやとした感想や感情について備忘のためにメモしておきたい。
まず3カ所。
p40、結婚する前の「私」が彼にあることを頼まれたときの「かしこまりました」。
p70-71 「私」の心を占めた「ずるい」という感情。そして自分を責めてしまうこと。
p74 かいがいしく夫を世話する「私」が抱いた「夫をこれ以上かわいそうな目に遭わせるわけにはいかない」という気持ち。
基本的に「私」は知識の問題なのか育てられ方(による考え方)のせいなのか、とにかく自分が悪いと思っている。週刊SPA!のインタビューで著者のこだまさんは、夫の「ちんぽ」が相当大きいと話していたし、実際本作でも「私」は「夫」以外の男とはセックスできている。だからむしろ「私」よりも「夫」のほうに責任はあるように思えるが、どこまでいっても「私が悪い」という感覚は消えない。
ここで思ったのは、セックスというものにおいて女性がどれだけ「受け身」であるのかということ。いや、物理的、フィジカルに言えばたしかに女性が「受け」なのだけれど、もっと気持ちの問題でどうなのかということだ。「2人でする」ではなく、あくまで「する-される」ものなのだなあということ。
それがおかしいとかいいたいのではなくて、たとえば海外ではどうなんだろうか?昔からそうなのだろうか?などと考えたのだ。さらには女性同士のセックスだとどうなんだろう、ということも。
同性同士ではタチ-ウケがあると聞くが、特にそういう関係がないカップルもあると聞いた気がする(女性同士だったと記憶している)……。
たしかセックスは「性交」とも書く。「交わる」であって「挿入」ではない。ということからすると、男がする、女がされる、ものではなく、あくまで男女が2人でするものではないだろうか。
いやしかし、そうなると同性同士がするのはセックスではないということか? いやセックスであっても性交ではない?--といった疑問が浮かぶ。ただセックスは「性行為」もいう。この表現は、性交よりも大きな概念のようにも思える。
そこでWikipediaを見てみると、性行為とは、性器の接触や性交などの行為のこととある。なるほどやはり性行為≒セックスであって、性交⊂セックスということなのだと納得がいった。
ただやはり、どこまでいっても女性はされるもの、という感覚は強い。物理的、そして歴史的にスタンダードとされているのだろうが、しかしだからといってそれが正解、誰にでも当てはまるとも限らない。
どうでもいいことなのかもしれないが、とにかく気になったのは、「私」が自分を責めすぎなのではないかということだ。
話は替わって、セックスではなく仕事に関連した言葉で考えさせられたのが、この夫の言葉。
p87 「学校の体裁や職員間の足並みよりも、生徒の気持ちをいちばんに考えなきゃ。とにかく教師が駄目すぎる。生徒が荒れている原因を探ろうとしていない。とりあえずその場を収めることに必死で、何もなかったように授業を進めちゃう人がいるでしょ」「そんなの何もしてないのと一緒なんだよ」
相手が多感な時期の学生だから、ということもあるだろうが、目に見える衝突や対立を避けたからといって、問題が解決されるわけではないという、言われると当たり前だがなかなか正面から向き合えない姿勢について明快に指摘しており、身につまされる。
このほかにも、ちょっと面白いなと思ったのが、この2カ所。
p63 私たちは再び、手と口で出す百姓の暮らしに戻った。という表現。
p111 アリハラさんがちんぽを擦るときの擬音。
タイトルの面白さ、話の内容はもとより、こうした表現の面白さも本書が売れた理由なのかもしれない。
全体的に思ったのは、これは女性だから書けたんだろうなということだ。自分は男なので、どうしても男の立場から考えてしまう。この時「彼」はどう思っていたんだろう。「夫」になってから何がどうなったんだろう--。本書は往復書簡のような形はありえなかっただろうか?
しかし、夫がこうした独白をするのはむずかしかったのではないかと思う。『妻の●●●に(自分のちんぽが)入らない』はありえなかっただろう。
ん?なぜそう思ったのだろうか?恥ずかしいから?……いや、「私」もきっと恥ずかしいはずだ。おそらく男が書けないと思ってしまった理由は、「男のほうが格好をつけるもの、自分の恥ずかしいところをさらけだすのが嫌な生き物だ」と思っているからだろう。
「さらけだすことで申し訳ないという気持ちになるのでは」という気がしたのだが、ここで思うのは、「それはつまり相手が悪いと思っている」ということなのだろうか?
なかなか整理できない。本書を読んだ男性、女性両方から意見を聞きたいものだ。
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