2014年8月19日火曜日

思春期からの距離を測る――「思い出のマーニー」を観て

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「ジブリっぽい」という言葉の定義をたとえば「ラピュタやナウシカ、千と千尋、ポニョなどのファンタジックでアドベンチャー感のある作品」とするとしたら、本作は「ジブリっぽく」はない。だから、「ジブリっぽい」ものを期待していって「裏切られた」という人が多そうな作品だった。うん、これは評価が分かれるだろうなと思った。



本当に意外性あふれる作品で、これをジブリでやるということ自体、意欲的に感じられる(冒頭のシーンの地味さといったら!)。僕はそんなに嫌いな作品ではない。多分、2回目観たらまたいいところが見つけられるだろう。

外国が舞台の原作を現在の日本にどうやって置き換えるんだろうと思って観たが、その点はかなり苦しかった気がする。ギリギリかなぁ。といっても原作を読んだことはないのだけれど、マーニーという存在の説明が、現在の日本で描写されることでファンタジーを失ってちょっと怖い気もした。

本作は思春期の女の子が観るといい作品なんだろうなと思う。ジブリの鈴木さんも

『マーニー』の宣伝が女子中高生向けになっていることについて、映画を観て気に入ったという年配の観客から「なぜもっと大人に観せないの?」と手紙をもらったと明かした
と話している。

だからなのか、鈴木さんによるコピー「あなたのことが大すき」は大人から見た本作の良さ、子どもたちにこう感じてほしいという願望が出ていて、監督やプロデューサーが観客に感じてほしかったものとギャップがあったんじゃないかなと思った。

(だからこそ)主人公に共感できるのはたしかに思春期の女の子かもしれないけれど、もっと年下の小学生とか、(昔は女子中高生だった)大人の女性、そして異性である男性それぞれで、(思春期からの距離により)感じ入るところが違うだろうから、一種のリトマス試験紙、物差しとして面白い存在の作品だと思う。

本作で残念だったのは、声優に力がないこと。好き嫌いの問題ではなく技術的に未熟だと思った。どうしても感情移入できない。マーニー役の有村架純も決してうまくはないが、現実離れした役柄なのでセーフかなと思った。

余談ですが、全然ユリじゃないよ。「その好き」じゃない。