最近、エンリケさんをテレビで観て知り、「エンリケって航海王子かよ笑笑」とか思いながら観たのだが、思いのほか面白い人で感心した。そしてその数日後、田端さんが著書を勧めているらしいことをネットで知り、『結局、賢く生きるより素直なバカが成功する 凡人が、14年間の実践で身につけた億稼ぐ接客術』(講談社)を買って読んでみた。
結論からいうと、私の学びはごく陳腐。「成功には秘策はなく、誰もが当たり前だと思う徹底してやりきるしかない」ということだ。
現ナマ持ってハイブランドの店で買い物する元キャバ嬢
エンリケさんは14年間、名古屋のキャバクラで働きトップになり、いまは東京に拠点を移して会社経営をしている才女。
テレビ番組では、現金の束をバッグに詰め、運転手付きのレンジローバーをハイブランドの店につけて買い物に行くところが写されていた。民放のバラエティらしい、お金持ちの面白紹介の演出。そして番組後半では、「実は彼女は今では会社社長で……」と会社が紹介されていた。
前半のバラエティらしい演出のシーンでも、後半の真面目な一面を見せたところでも、「あぁ、この人は成功するべくしてしたんだろうなぁ」と思わせる、人柄の良さを感じさせた。
こんなことを書くと「金持ちは余裕があるからじゃないのか」と言われそうだが、彼女の発言には気遣いがあり、会社経営に至った経緯やどう考えてビジネスに取り組んでいるか、といった思想も節々から感じられたのだ。
なお今回読んだのは2020年11月12日発売の新刊。この前にも、何冊か著書を刊行しているようだが、私は彼女の本を読むのは本書が初めてだった。
そういう本をたくさん読んできたわけではないが、おそらくそこに書かれているであろうことと、エンリケさんの新刊に書かれていることには大差はないと思う。
簡単なことだが続けることが難しい
これは何も、「本書に価値がない」とか、「読んで面白くない」といっているのではない。
キャバ嬢だろうがなんだろうが、成功した人は何も他の誰もが持っていない秘策を持っていたり魔法を使えたりするのではなく、彼女も同じだということだ。
彼女が新刊で挙げた、大切にしていること・実践してきたことは、「そりゃそうだよなぁ」と思えることばかりだった。驚きはない。ちょっと気をつかって周囲と接している人であれば、結構な確率でやっていることが多い。
たとえば、誘われたらどんな時間でも断らずに行く、無茶なことをいうお客さんでも目の前で否定しない、遅刻しない、お礼は必ずその日か翌日にする。LINEではコピペのような文面を送らない……。特に、いわゆる「営業」という職種の人であれば共感するのではないだろうか。
だが、そうした誰もが「当たり前だ」と思えることでも、誰もが長きにわたってモチベーションをきらさずに続けられるわけではない。
事細かに結果を記した「エンリケ日記」の写真が興味深い
本書は最後に、付録として彼女がつけていたスケジュール帳のメモが「エンリケ日記」として写真で掲載されていて興味をひいた。誰が来てくれて指名が何本取れたか、(同伴や指名でつく)ポイントが何ポイントになったか、いくら売り上げが上がったか──。手書きで細かくしっかりとつけられている。
目標をたて、それを達成するためにどうすれないいのか、何をすべきなのかを考える。ときには人に聞き、自分にできること、できないこと、性格やキャラを分析して戦略を立てる。日々、結果をメモして時々振り返ってあらためて分析する。
こうしたことは多くのビジネスパーソンがおそらくやっているだろう。でも、なかなか続かない。成果が出るまえに疲れて止めてしまう。自分なりの戦略、勝ちパターンが見える前に、試行錯誤の手を止めてしまうのだ。
結局、彼女が成功したのは、運や育った環境などの影響もあろうが、自分なりのやり方を見つけるまで、「当たり前」のことを徹底してやり続けたからにほかならない。