2014年12月14日日曜日

「事情」を言い訳にするのやめる!――『佐藤可士和の打ち合わせ』を読んで


佐藤可士和さんと野地秩嘉さん。

新刊を書店で見かけたらとりあえずチェックする名前。その両名が時をほぼ同じくして著した本のテーマが「打ち合わせ」だ(佐藤さんが11月、野地さんが10月)。今回は刊行直後に読んでそのままにしていた佐藤さんの新刊の感想をまとめておく。



佐藤さんの書籍は過去にも『超整理術』などを読んで、考え方に共感できることは分かっていたのだけれど、今回もとても参考になった。特に最近転職して働き方が変わり、新たな悩みに直面していたこともあって、非常に役に立った。

本書での「打ち合わせ」は「とりあえず集まっていろいろ話す」ことは指していない。そもそも「とりあえず打ち合わせ、はNG」という立場。情報共有だけなら、日頃のコミュニケーションでやってしまえばいい。

ブックマークしたところ(共感した/なるほどと思った)を一部だけ並べてみる。

しゃべらないのであれば、打ち合わせに参加するべきではない。(p.33)

これはまさにそう。その場にいるだけでいい人なんていない。いなくていい人はいなくていいのではなくて、いてはいけない。佐藤さんも書いているが、何もしない、しゃべらない人は「黙るというパワー」「負のオーラ」を出してしまうので、ゼロではなくマイナスだと思う。

上司やリーダーは、バンバン具体的な指示を出すのです。それでは部下の成長につながらない、という声が聞こえてくることもありますが、学び取れる部下というのは、それで十分学び取ります。(p118)

これは参考にしたいと思ったが、「学び取れない部下はどうするんだ」という考えも頭をよぎる。雇った会社のことを考えると、学び取れないからといってそうそうクビにはできないし……。まぁ、手は出さずに口で分かるようにすればいいのか。

打ち合わせが終わった瞬間に、ほんの5分でいいので、その打ち合わせについて振り返ってみましょう。(p122)

これは似たようなことを打ち合わせの終わりにやっている(やろうとしている)けれど、自分が参加した打ち合わせ(ファシリテーションをしていないもの)もあるわけで、敢えて終了後に自分で時間をつくって振り返るのは有用な気がした。

終わりの時間が決まっていたとしても、その日の目的に達したと感じたなら、打ち合わせは終えてしまう。予定より速く終わらせるほうがいいのです。
よく、暗黙の了解で「打ち合わせは1時間」だと思い込んでいる人がいます。(p106)

そのとおり。打ち合わせもコスト。大勢の時間をとっているんだから、無駄な時間はとるべきではない。ただブレストをしたい場合は話が別か。

「そんな感じで」禁止令
よくあるのが「そんな感じで」「とりあえず、この方向で」といった、わかったようでよくわからない言葉で結論が作られてしまうことです。

僕が繰り返すのが、「これでいいですか」「これでいいですね」という言葉です(p125)。

これは昔、コピーライターの谷山雅計さんが書いていた「なんかいいよね禁止」というのと通じると思う。「なぜ」というところまで言語化しておくべきということ。


打ち合わせで、やる気に大きく影響するものがあります。それが、「事情」です。何か新しい取り組みを進めようとするときに、すぐ出てくるのが、「我が社では、それは……」「でも、そんなスケジュールでは……」(中略)「これまでは、そんなことはやったことがないので」「こんなことまで、できません」「もう時間がない」「そんなことをやるだけの設備がない」……。
できない理由をどんどん並べて行くわけです。(中略)
そして、優れた仕事人というのは、その流れを変えられる人なのです。

打ち合わせで、「事情」に見舞われたときは、僕はすっぱり言わせていただくことにしています。
「そうおっしゃるのであれば、プロジェクトから降りられてはいかがですか」と。(p173)

これは耳が痛い。「学び取れない部下はどうするんだ」ということもそうだけれど、つい「事情」を慮ってしまう。

けれど、そんなのは「言い訳」でしかない。佐藤さんがいうように、その事情をブットバせる人が「優れた仕事人」なわけだから、「事情があるだろう」なんて言っているのは、できない自分への言い訳でしかないのだ。

ただ会社・組織がしておくべきこともある。しっかりその「プロジェクト」に関わる人間(責任をとる人間)を明確にしておくこと。本書でもp63で「体制図」の例を出して、そのプロジェクトには誰が関わって、どういう上下関係で進めるかを図示すべきと主張しているが、まったくそのとおり。

「言わなくても、書かなくても分かるだろう」じゃ分からないし、口を出す筋じゃない人が口を出すことがある。
もちろん、それが「いい意見」なら、筋じゃない人が口を出してもいいが、往々にして、建設的ではないただの思いつきでしかない。

作らなければいけないのは、「そうか、リーダーがそういうなら、それでやってみようよ」という空気です。(p206)

これは理想。打ち合わせの問題というより、日頃の人間関係の築き方、コミュニケーションの取り方が大きく影響すると思う。「あの人は仕事ができる」という評価をしてもらうことも必要だが、難しいのは、それだけでは人はついてこないということなのかもしれない。

クリエイティビティとビジネススキルが仕事の両輪(p238)

これは佐藤さんの事務所・サムライでスタッフに求められる仕事の評価軸の話だが、本当にそうだと思う。特にクリエイティブに関わる人の中にはビジネススキルがない人、なくてもいいと思っている人がいるし、その逆もそう。佐藤さんは「クリエイターもビジネススキルが求められる」「ビジネススキルは努力すれば必ずアップする」とも書いている。

自分も両方兼ね備えた人間になりたいし、そういう人、そういう人になろうとしている人と仕事をしたいと思う。

このほかにもたくさん付せんをつけたのだが、特に備忘のために残しておきたい項目だけ触れてみた。なかでも「事情」の項目については、自分の胸に手を当てて考えるまでもなく反省すべしと思った。

「優れた仕事人」になるために、事情を言い訳にするのをやめて仕事に取り組もう。そう改めて決意した。