2013年12月27日金曜日
「文書が読める」は「意味が分かる」「仕事に使える」ではない——『A4一枚決算書速読術』を読んで
Webサイトの仕事が増えているので、アクセス解析をより深く理解せねばと思っている。具体的にはGoogle Analyticsを今以上に詳しく使えるようになりたいのだけれど、Googleという米企業のサイトだからかなのか何なのか、言葉遣いや構造が独特だなぁと感じてなかなか進まない。なんと言うか、日本人が作ったサービスじゃないなぁ、というか……。英語のサービスを日本語にしているからなのだろうか。
Analyticsは無料のサービスだから使ってみるのは簡単だ。
かくいう自分も、触ってみて何となく構造が分かって、実際に使っている。
でも使いこなせるようになるのは容易ではない。
使いこなすとは、どういう機能があるか分かるとか、レポートの意味が分かるとかいうことではない。ビジネスで取り扱うウェブサイトの問題点を浮き彫りにし、仮説を立て、必要なデータをどうやって取ればいいか考え、収集したデータをもとに分析し、サイトの問題点をなくせるようになるということだ。
これは会計の書類に関しても同じことがいえると思う。
たとえば僕も、B/SやP/Lは一通り読める。書類を見て、それぞれの項目の意味くらいは分かる。業種にもよるが、特徴があれば何となくそれも分かる。「売上原価が高いなぁ」とか「販管費かけすぎなのでは?」「営業外がなんでこんなに!?」くらいの感想は持てる。
だがそれでは、使いこなせているということとはほど遠い。
決算書など会計の書類を見て、その会社のどこが良くてどこがダメなのかということが分かること。それをロジカルに説明できること。そうならなければ、使いこなせているとは言いがたい。
先日、関西で活動している公認会計士の方の新著を拝読した。著者の香川晋平さんは、『東大卒でも赤字社員 中卒でも黒字社員』など著書をすでに数冊出しておられる。
新著のタイトルは『会計のプロがやっている<A4一枚>決算書速読術』(日本実業出版社)という。その名の通り、決算書からA4一枚程度にまとめれば経営分析できるというものだ。
帯には「ただの“読める”が“意味がわかる”“仕事に使える”に変わる」とある。そう、まさにそれが大事なのだ。
この「A4一枚にまとめる」ということについて、注意しないと見過ごしてしまいそうだけれども、これ、すごく大変なことだと思った。
よく「上司への提案資料は1枚にまとめろ」というようなことを聞くけれど、それとはまた意味が違うように思う。提案資料、プレゼン資料は自分が考えるものだし、何が大事なのか、何が受けるのか、なぜそれが必要なのかがしっかり見極められていれば、たいがいは提案内容をコンパクトにできるだろう。
しかし、決算書は種類もページ数もかなりある。だからこそ読みたくなくなるのだけれど、それをA4一枚にまとめてしまうというのは、思い切りと自信がないとできない。
実際、本書の「はじめに」で香川氏は、公認会計士・税理士はそれぞれ3万人以上、7万人以上いて、自分よりも最先端の会計基準や税法に詳しい人がいることを認めたうえで、そんな会計人の中でも「“オンリーワン”ではないかと自負している」と胸を張っており、その自負している特技が、「何ページにもおよぶ決算書から、必要とする情報だけを抜き出してA4一枚にまとめ、決算書を使う目的ごとに、適切、かつすばやく分析すること」というのだ。
以前から幾度となく僕は、会社員であっても(経営者でなくても)決算書は読めたほうがいいと主張している。まずは雑学、教養として「知る」ことからはじめる。すると知らなかったときには見えなかったものが見えるようになる。違いが分かるようになる。そうして仕事に役に立つようになっていくのだと思う。
「自分はそういうの疎いんで」というのは、ちょっともう言うべきではない言葉、謙遜ではないかと思う。
新刊は、決算書を見ただけで閉じたくなるような全然知識がないという人から、僕みたいにちょっとだけ分かるくらいの人まで、幅広く学べる一冊だと思う。中のレイアウトが教科書然としているので抵抗感がある方もいらっしゃるかもしれないが、ごちゃごちゃしておらず表と文とでしっかり情報が整理されていて読みやすい。
同じものを見ても、気づく人と気づかない人がいる。気づかない、気づけない人は使えているとはいえない。それはサイトのソースも、アクセス解析結果も同じなのだろうと思う。
使いこなすというレベルに達する前に(というか達する為に)は、機能の全体的な把握と理解をすることが大事だ。意外に「知ってるつもりで知らないこと」は何の分野でも多いし、それなりにしっかりと理解しておかないと、必要なときにその引き出しをあけることができない。ウェブサイトも会社の業務内容も千差万別。置かれた状況や達成すべきミッションはそれぞれ違っていて、一つとして同じものなどない。だから「知ってるつもり」程度では役に立たないし、偏った知識はかえって邪魔になるかもしれない。
Analyticsを改めて勉強しなければと、本書を読みながら思った。
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