2012年8月31日金曜日

あきちゃ、さえ、はるごん、まりやんぬを推す――その移籍は左遷じゃない





「左遷」って何だ「左遷」って

 AKB48初の東京ドーム公演で、メンバーのチーム移籍など異動(組閣)が内示されました。推しメンのこじはるがAからBに移るというのもちょっと驚きでしたが、それ以上にあきちゃのJKT移籍(兼任ではなく移籍。仲川遥香と)、さえのSNH移籍(同じく。鈴木まりやと)にはかなり驚かされました。彼女たちのブログを見ると「自分で決めた」などとまことしやかに書かれていますが、本当のところは分かりません。

 それよりも、本件についてここで書きたいのは、移籍を「左遷」と表現することに対して違和感を覚えたことです。「笑えんのかな僕達は」ということ。

 そういう言い方をしたほうがネタとして面白いのは分かります。芸能界の住人ならネタにされてナンボでしょうから、「頑張ってきて」というエールばかりでなく、「左遷されてやんのw」という揶揄もあっていいでしょう。しかし、私がそう感じた理由は、「左遷」という言葉を使っている人の中に、「東京しか認めない」という狭量な考え方があるのではないかと思ったことです。そして、そこには「東京にいれば大丈夫」という根拠のない安心感が見て取れる気がして、とても危うく感じるのです。

 アジアでは日本の芸能界は注目されていますし、日本の芸能界は東京中心であることは間違いありません。ただ忘れてはいけないのは、もはや「アジア=日本」ではないし、一昔前ほどには、日本や東京に対する求心力はアジア各国においてなくなりつつあるということです。それは芸能界に限らず、です。

 現状において、東京の芸能界から上海やジャカルタに行くことは、ギャラや待遇の面でもランクが落ちてしまうのは間違いないでしょう。いくら中国が景気がいいとはいえ、東京での活動ほどは収入は得られないと思います。その意味において「左遷」という表現は間違っていない。
 ただし日本の、東京の経済力や影響力がこれからも続くとは限りません。
 その国の芸能界の規模や経済力はおそらく、国全体のそれと比例しているのではないでしょうか。だとするならば、経済規模が縮小している日本の芸能界、東京の影響力は小さくなってきているし、これから大きくなるとは考えにくい。

もし機会が与えられたとして、お前はジャカルタで勝負できんのか

 本件についてネットでわいわい騒いでいる僕たちにとって、日本は物心ついたときから豊かな国でした。74年生まれの僕はバブルを知りませんが、ちょっと上の世代はそういう時期を知っていてます。下の世代はバブルは知らないとはいえ、食う心配なんてしなくていい、まったり豊か(贅沢はできないけど)みたいな環境で生まれ育ってきたと思います。


 しかし状況は変わりました。失われたウン十年という言葉を出すまでもなく、今の日本は過去の貯金で何とか食えている状況といっていい。一人当たりGDPはもう数年前にシンガポールにも抜かれています。ここ数年、韓国人はもう日本なんて見てないし、中国人だって日本よりアメリカか母国を選ぶようになっています。日本しか知らない自分たちには思いもつかないほど、日本や東京のプレゼンスは下がっています。

 そんな中で、大学進学と言えば東大とか六大学、就職といえばはJTBだ邦銀だというドメスティックな視点しかない人たちが、JKTやSNHへの移籍を「左遷w」と笑っているのだとしたら、笑止千万、片腹痛し。余計な世話であることは承知していますが、笑えません。

 ジャカルタや上海は、確かに現時点では東京より「下」なのかもしれません。しかし「上」になっていく大きな可能性があります。「上」にならずとも、相当プレゼンスを高める可能性を秘めています。そもそもインドネシアの人口がどれくらいいるのか、経済規模がどれくらいなのかを知った上での「左遷」発言なのかということも言いたい。

 ジャカルタや上海に行っても食っていける、勝負できる人間でない限り、「ワロタ」は単なるごまかしです。中には「自分だったら行かないわー」というコメントを残している人もいましたが、全然笑えないんです、そういうの。

 ネタにしてる余裕は、日本にも東京にもない。そういう緊張感・危機感が必要です。

海外移籍する4人を推します

 理由や本心はどうあれ、「左遷」と言われても仕方がない異動を受け入れた4人を、僕はこれから推したいと思います。やっぱり言葉の通じない国に行って、フロンティアとして開拓する役って大変だと思うからです。

 彼女たちは、AKBではトップになれなくても日本の芸能界で残れるかもしれません。名刺に「元AKB48」って書くこともできるし。4人とも、とは言わないまでも、あきちゃとさえは選抜でも17位と11位に入っていますから、何とかなるかもしれません。
 ただ彼女たちは、それではダメだということが分かっている。そんなのでは食えて数年だろうし、大きなことはできない。自分を成長させることはできない。それが分かっているのです。自分が芸能界に残るには48グループに残ったほうがいいと判断し、そのためには外国に行くしかなかった……。そういう消極的な理由が本当のところなのかもしれません。

 それでも、とにかく彼女たちは厳しい道を受け入れて、自分にできることをしようとしている。
 これは48グループにとっても大きな転換点になるはずです。「元AKB」として、数年を楽しくアイドルとして過ごすラクな道を選ばなかった彼女たちは、その重責を知っていると思います。そんな彼女たちは、きっと大きな成果をあげてくれるはずです。


 さしこがHKT兼任になった時、僕は、彼女にとってもHKTにとっても意義のある、前向きなことと感じました。むしろ、なぜ皆が「左遷」という意味が皆目分かりませんでした。地域の時代といわれている中で、これまでと同様に東京一極集中でのみビジネスを続けるのではなく、地域・地方において新たな挑戦をすること。そこになぜ後ろ向きな要素があるのでしょうか? これまで難しかったことに挑戦するのは、既にポジションを確立した者の責務でもあります。
 その上で、今回の海外“移籍”は、さしこのHKT兼任というドメスティックな人事以上に前向きで、かつ大きな可能性を秘めた戦略であると思います。なかなか浸透してこないJKTやSNHのテコ入れにつながるはずです。


 能力があって努力できる人は、左遷を栄転という評価に変えられると思います。それを信じられないのは、7人しか観客がいなかったAKBがドームに連日5万人弱を呼べる日がくるのを信じられないのと同じことだと思います。



 ということで、これから推しメンは、AKBがこじはる、NMBはさや姉、HKTはさくら、JKTがあきちゃとはるごん、SNHがさえとまりやんぬ、ということで一つよろしくお願いします。 



劇場版『1830m』
Disc-2のM-7
アボガドじゃね~し…」
渡辺麻友、指原莉乃)が好きです。