2012年8月9日木曜日

パチンコ 何とも日本らしい存在――『パチンコのすべて-サルでもわかるココだけの話―』を読んで



建前・体面重視の日本社会的の縮図
T・U・Cショップ含む「三店方式」


 都内でパチンコ店のそばには必ずあるT・U・Cショップ。あれを見るたびにつくづく、「パチンコ」というものの“不遇さ”を思わずにいられませんでした。

 私はパチンコはしませんし、何も擁護するつもりはありません。大した知識もありません。ですが、T・U・Cショップに行けばパチンコの出玉をお金に換えてくれるということくらい知っています……と書くと誤解になるということも。つまりパチンコ店での出玉の換金はNGなので、店は客に出玉と引き換えに何かしらの景品(特殊景品)を渡してくれる。客がその景品をT・U・Cショップに持って行って、そこで初めて換金できる、ということくらいは知っています。

 ただまぁ要は、実態としてパチンコの出玉を現金に換えることはできるわけですから(パチンコ店内ではありませんが……といいながら、これは驚きだったのですが、本書によると店内で換金できる県があるそうです)、T・U・Cショップの存在は、日本的な建前を重んじる社会にそぐわしい、象徴的な存在だなぁと、不思議な感覚を覚えながら見ていました(実際、パチンコは日本独特の文化のようです)。


 ところでパチンコについてはずっと気になる存在でした。人気のコンテンツはすぐに「CR~~」とパチンコ台になる。CR新世紀エヴァンゲリオンとかCR北斗の拳とか……ミュージシャンが台になることもありましたし、「えっ、そんなものも?」という台もあったように思います。「メーカーは必死になってコンテンツ探してるんだろうなぁ」としみじみ思っていました。
 TVでも、昔はパチンコ・パチスロ機メーカーやパチンコ店のチェーンのTVCMなんてなかった気がしますが、最近は目立っています。有名女優やタレントがパチンコ店チェーンのオーナーと熱愛とかいうニュースもたまに聞いた記憶があります。
 一方で、『闇金ウシジマくん』(TV版)で債務者がパチンコをよくやっているように、借金とか生活保護とか、そういう言葉と一緒に語られる。昨今、生活保護の不正受給が報道されるにつけ、ますます気になる存在となっていました。

 ですので、本書を書店で見かけた時に興味をひかれ、すぐに手に取りました。
 結論からいえば、パチンコについて知らない素人がおそらく不思議に思うであろうことを、分かりやすく解説している、入門にピッタリの一冊でした。とても面白かった。パチンコ店の経営や業界で動いているお金の規模感がつかめるし、知らず知らずにパチンコに対して持っていた思い込みが覆されました。筆者ら(共著)はパチンコのジャーナリスト、ライターなどとしてその業界で食っている存在ではありますが、業界に寄り過ぎた感じもしませんでした(ただ、ヒステリックなパチンコ否定論には辟易している感じが面白いように見て取れました)。


 ところで上に書いたような、パチンコ店で直接お金を渡さないシステムは「三店方式」と呼ばれるそうです。なぜこういう仕組みなのかといえば、風俗営業法第23条で、遊戯場営業者は「現金又は有価証券を商品として提供すること」「客に提供した商品を買い取ること」を禁じてられているから(違反すると6カ月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金)なのですが、さらに詳しくは本書を読んでいただければと思います。
 ただこの面倒な仕組み、適法性については議論があるそうです。「そりゃそうだろう」と思いってしまいますが、パチンコ店チェーンが上場できていないのはその証拠と言われているそうです。ニュース


 本書は面白かった。だからといってパチンコをやってみたいとは思いません。しかしIPOの件数が減ってしまった今、将来においてパチンコ関係企業の上場が認められるようになるのか、TVCMなどの広告活動の行方がどうなるのかなど、経済に与える影響について注視しておきたいと改めて思いました。もちろん、そもそも適法性について疑義が提示されている訳ですから、その議論が今度どうなっていくのかも気になります。公営カジノについてはちょっと関心があるのですが、パチンコの存在についてもあわせて語られるべき論点でしょうから、この点も気にしておきたいと思います。

 いずれパチンコ否定論についても読んでみることにします。

 ところで「T・U・C」って何なんだろうと思ってウィキペディアをみたら、「東京商業流通組合」の事業部門である東京ユニオンサーキュレーション株式会社(Tokyo Union Circulation)の略とのこと。へー。
 あと本書の副題はイマイチな気がしました。「サルでも分かる」と「ここだけの話」は両方ともありがちな、“とってつけ”の文言。それをさらに重ねているのが「うまくないなぁ」と。