『人生が整うマウンティング大全』(マウンティングポリス著、技術評論社)読了。前半は常にニヤニヤしながら、時に声出して笑いながら読みましたが、すべて読んでみてこれはとんでもない一冊だ、と思いました。
本書を単なる”ネタ本”としてスルーしたり、いくつかのマウンティングケースを読んで分かったつもりなったりするのはもったいないです。
「マウンティング×●●」の可能性は計り知れない
本書の前半は、この画像にあるとおり、「ニューヨークマウント」「屋久島マウント」「自民党呼び出しマウント」「仕方なく東大マウント」「古典愛読マウント」などいろいろなタイプのマウントを分類、紹介しています。
このパートも辛辣かつ的確な指摘ばかりで、いちいち楽しめるのですが、その楽しさを感じただけで終わらせてしまっては、本書のよさを理解できないんじゃないかと思います。
読みごたえがあるのは後半です。前半の実例を踏まえて、マウント欲求とさまざまなマウンティング手法の存在に気づいた自分たちが、今後ビジネスやプライベートをよりよいものにするためにどう活用すればいいのか、ということについて解説されています。
たとえば、コミュニケーションを円滑にしたり、社内でよりよいポジションを獲得したりするためには、(エリートの)ステルスマウントを見抜き、敢えて相手に「マウントさせてあげる」ことで人や組織を動かす「マウンティング人心掌握術」(p158に誤植ありました)という考え方が役に立ちそうです。
また、こうした社内政治、コミュニケーションでの活用のとどまりません。
マウンティングがビジネス、企画のタネになることにも言及、「バズワードより顧客のマウンティング欲求に着目を」として、人々のマウント欲求をビジネスにつなげることを提案。具体的に、「マウンティングエクスペリエンス(MX)起点で新規事業を企画する際には、顧客を『階層化』するための『対立軸』を用意せよ」など踏み込んだTipsまで紹介しています。
また、アメリカの世界的有名企業の、マウント欲求を満たすための装置づくり成功事例を紹介、さらに数少ない日本国内の成功例にも触れた上で、「日本経済にはマウンティングが足りない」「マウント消費の活性化が長期的な経済成長をもたらす」「UXではなくMXデザイナーの育成を急げ」といった、ユニークな(本書にしかない)鋭い指摘・提案もしています。
特に最後部、「マウンティングと共に生きる」という章では、「『他人と比較するな』論に振り回されるな」から始まり、「マウンティング欲求を『手放す』必要などまったくない」と喝破しています。
ここまでにさまざまなマウンティング実例を読み、自分が知らず知らずにやってきたマウンティングを思い出しては一人赤面し、あまつさえ(笑われないように)「今後はマウンティングなんてしないように心がけよう」と思った人に向けて、
「そんなこと思う必要なんかない!認めて、そんなの無理なんだから、潔く認めて、むしろ活用しちゃえ!」
とありがたいアドバイスをしてくれています。読者はここで胸のつかえが下りることでしょう。