2024年2月24日土曜日

『メンタル脳』なぜ幸せな気持ちは長続きしないのか 本書の次は橘玲さんの著作を読むといいかも

メンタル脳

メンタル脳』(アンデシュ・ハンセン著、新潮新書)読了。『スマホ脳』が2021年に一番売れた本(オリコン)らしいのですが、このシリーズは読んだことがなく、橘玲さんが勧めるコメントをしておられたので読んでみました。かなりやさしく、中高生くらいでも読めそうな一冊でした。

読んでおけば不安やストレスを感じても、あまり落ち込まなくなるかもしれないが……

脳や心というものが、自分が認識しているとおりのもの、ロジカルなもの、という訳では決してないことは、既に橘さんの著作を何冊も読んでなんとなく知っていたので、精神科医であり本職ともいえる著者(ハンセン氏)の主張は、スッと頭に入ってきました。

本書は子供でも読めるようにかなり平易に書いてあることもあって、橘さんの本と比べると物足りなさを感じましたが、この手の本や、橘さんの一連の著作を読んだことがない人にとっては、読みやすく、基本的におさえておくべきところが頭に入ってきていいのではないかと思います。

ただ、こうした書籍を読んで、脳が感情を使って(脳の持ち主を)コントロールするものだ、といった考え方を知っておけば、不安やストレスを感じたときも、「あぁ、これは防御反応だな」と思えるので、ちょっと冷静になれるでしょう。

しかし弊害として、幸せな気持ちになったときに「どうせこれも長続きするわけではないのだ」とも思えてしまうので、興は冷めるということがあるかもしれません。

そもそも幸せが長続きしないのは、いつまでも満足して浸っていれば、新たに何かを求めて行動するということがなくなってしまうからで、そうならないように幸せな気持ちは長続きしないようになっています。

そこで本書では、幸せをゴールに設定して追い求めることをやめるよう説き、そこまでの道のりにこそ意味を見出すべきであり、また、幸せの”主な材料”は家族や友人、同僚などの「他の人間」であるとしたうえで、”幸せのレシピ”を次のように定義しています。

1 一緒にいて快適で、信用できる人に囲まれる
2 夢中になれて、意味を感じられることをする(他の人に対しても意味を感じられるようなことをする)
3 1と2を繰り返す

こうすることで、幸せを感じられる瞬間が訪れると提案しています。あまり難しく考えずに実践してみるとよいのかもしれないという感想を持ちました。

本書ではこのほかにも、運動の大切さなどが切々と説かれており、運動不足を実感している自分としては、あらためてメンタルヘルスのためにも運動を再開しようと思いました。

この本を読むといいなと思うのは、ちょっとしたことですぐに不安・心配になったり、自分がネガティブ思考をしがちと思っていたりする人や、ストレスコントロールに関心がある人です。あとは、自分でなくても、家族や周囲にそういう人がいる場合も、処し方が分かるようになる気がします。

さらに、本書で脳の働きや遺伝・環境などに関心を持ったら、橘さんの書籍に進まれると尚よいのではないでしょうか。

(本書で「あれ?」と思ったことが一つあり、それは、p187の挿絵が、本文で触れられているカワウソではなくラッコだよなぁ、ということです)