2024年1月22日月曜日

『ルポ歌舞伎町』住人だからこそ見られたもの、聴けたこと、わいた感情

國友公司さんの『ルポ歌舞伎町』読了。Amazonのプライム会員ならKindleで無料で読める。2023年2月発行なので、まだ1年弱なのにもう無料で読めるという太っ腹。内容は、歌舞伎町に興味がある人なら一読して損はないどころか、とても面白く読めると思う(自分は数日で一気読みした)。

著者の國友氏は『ルポ西成 ―七十八日間ドヤ街生活―』(彩図社)、『ルポ路上生活』(KADOKAWA)などの著作も持つルポライターで、本作を書くにあたっても実際に歌舞伎町に住んでいる。知る人の多い”ヤクザマンション”と呼ばれる物件で、住むことになった経緯から話は始まる。

本作はルポではあるものの、過去の歌舞伎町を知る人たちも登場しており、今の歌舞伎町に至る過去、歴史についても触れることができる。筆致や想像される取材の熱量からして、筆者が歌舞伎町に(特に昔の、今とは異なる歌舞伎町に)強く惹かれていることが分かる。

以前読んだ『ルポ歌舞伎町 路上売春』(高木瑞穂著)が、まさにタイトル(副題?)にあるように立ちんぼが立ち並ぶ今の歌舞伎町の一つの顔、側面に迫ったものだとすれば、本作は、もっと広く、物理的にも、イメージ的にも、広義の歌舞伎町、歌舞伎町全般について知らせてくれる一冊。

出てくる人たち、そのエピソードももちろん面白いのだが、実際に作者が住んでいるからこそ見ることができた光景、聴くことができた話も随所に出てくる。何かを見聞きしたときの筆者の気持ちにも触れられており、客観的な第三者として、歌舞伎町の外から取材に来た人ではきっと湧きあがらない感情のようなものも感じられて、読みながらざわざわした。

また、終盤に出てくる伝説のカメラマン・篝氏の作品についてはもっと拝見したいと思ったし、話をうかがってみたいと思った。